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「外壁工事だって?」 「え、そうなの?」 「この手紙、そのお知らせだったよ。うちにも来てた。来月からだってさ」 「そうなんだ」 「もう一通三宝から来てんじゃん」 「間違って同じのが来てるのかな」 唐揚げを食べ終わり、残ったビールを啜りながら、テーブルに置いたままだった封書をペリペリと無造作に開けた。 【引き落とし不可のお知らせ及び振込み先について】 「はぁ?!」 自分でも驚くような大きな声に、冬馬さんも肩をビクンとさせパチパチと何度もまばたきをした。 「何なに?どした?」 「いや、その……」 家賃の引き落としが出来なかった、なんて恥ずかしくて言えない。ましてや家庭内のお金に関する話は、触れて欲しくないし触れたくないデリケートな部分だ。 「まー、深くは聞かないよ」 冬馬さんはそう言うと、残していたビールを名残惜しそうに飲み干し、 「オレ、帰るわ」 「えっ」 「皿は今日は洗わな……」 「待って」 「……」 「いてくれない?」 詳細も何も言わず、「いてくれたら安心だから」と帰るのを引き留めてしまった。 あんなことを言われたというのに。私の推測は間違ってはいないと思うのに。その気持ちを利用して、頼って、甘えてしまっているのに。 ダイニングの椅子に腰かけたままの冬馬さんの視線が背中にグサグサと刺さっているのを感じながら、リビングのソファーに移ってスマホを操作する。 冬馬さんは「わかったよ」と言ったきり、冬馬さんは、梅昆布をかじりながら2本目の缶ビールを啜っていた。
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