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8月24日木曜日。 今日はちょっとだけ特別な日だ。 それなのに、数日前に発生した台風のせいか、朝から重苦しい雲が垂れこめていた。 せっかくの特別な日が台無しだ。 湿っぽい空気は身体全部にまとわりついて髪をうねらせる。ぶり返している足首の痛みを庇いながら、各店舗からのサマーセールの売上報告をまとめ、昨年対比のグラフを作成していた。 退勤時刻が近づくと、空模様は一段と怪しくなっていた。 雨の降り出さないうちに今日のための買い物を急いで済ませバスに乗り込んだ。窓から見上げた空はその色を一層濃くしていて、お天気と比例するように気分もどんよりしてくる。私は、既読はつくけど返信のない駿へ送ったメッセージを少しだけ悔いた。 こんな日には馬鹿みたいに笑っていたいな。 それが出来る相手は家賃の引き落としが出来なかったと駿に電話をした日以降は、駅のロータリーではた迷惑な声で名前を呼ぶこともなく、玄関で待ち伏せして夕飯のメニューを尋ねてくることもなかった。
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