告白

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まだ薄暗い中、先輩との最後の日帰り旅行が始まった。 奈良までは4時間くらいかかるので、朝の6時前に大学前に集合した。 送られるはずの先輩が実家の車を門の前に止めた。 「すみません」 「いいよ。俺運転好きだからさ。 さあ、乗って」 運転席に先輩、助手席に私、2列目に2人、3列目に2人の6人でメンバー全員だ。 予定通り奈良に着いて大仏を眺め、辺りを散策し、お昼を食べてお土産を買って、楽しい気分で帰途についた。 後1時間で到着という地点で車の流れが止まってしまった。渋滞だ。 スマホで検索すると、少し先で玉突き事故があったらしい。 それから2時間、まだ動く気配がない。 後ろの4人は気を紛らすために何故か持っていたトランプで遊びだした。 ババ抜きから始まって、今は大富豪をしている。 『やったー、俺大富豪』『俺また貧民。ド貧民よりましだけど』と無理矢理明るく振る舞っているが、もう色々限界だ。 疲れているのに私を気遣ってくれる先輩を見ていると、3年間、首輪を付けられた犬のように大人しくしていた好きという気持ちが押さえきれなくなる。 やっと動いた車は、みんなの希望でサービスエリアに向かった。 車が止まると、みんなはすぐに外に出た。 先輩が車の鍵をかけた瞬間、私は我慢できずに告白してしまったんだ。 好きが溢れて止まらなかったから。 だけど……結果は惨敗だった。 *** 渋滞中ずっと我慢していた尿意とサヨナラして、すっきりとした気持ちでトイレを出ると、先輩が立っていた。 「君、バカなの? あんな切羽詰まった場面で告白するなんて。 でも、そういうちょっと抜けた君が好きだよ」 びっくりし過ぎて声がでない私を、先輩は笑いながらぎゅっと抱きしめてくれたんだ。 **fin**
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