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ロボット三原則――かつてアイザック・アシモフがSF小説内で提唱した人工知能を持つロボットが従うべきとした原則。人に危害を加えてはならない、人の命令には従わなくてはならない、自らの身を守らなくてはならない。
西暦二二一七年――AI世紀百年とも言われた現在。仕事のみならず家庭にまで深く入り込んだ人工知能搭載ロボットは、このロボット三原則をベースとした変更不可プログラムを基礎として成立していた。人へ危害の及ぶ可能性のある行為の禁止、判断の禁止、状況報告義務、人命救助の優先。今はこれがロボット四原則として主流となっていた。
人への危害が及ぶ可能性のある行為というのは、例えばボランティアでゴミ掃除をする事さえ不特定の第三者が不利益を被り間接的に危害となり得る――などのプロセスが働き、自ら行動することを止めさせる。しかし、人為的判断によりその行為が是と判断されれば活動を始める。
そして、その人為的判断やAIの行動は全て国が管理するデータセンターに報告、保管される。もちろん、ロボットが類似事項と認識して行動した内容も同様にデータセンターに送られる。さらにロボットの所有者はその内容を確認する義務を持つ。
人命救助の優先はその名の通り。
もちろん、ウチで十七年前から人型ハウスロボットとして働いてくれているアイもそれに準じる。例外なく国から割り振られた管理ナンバーが左目の下に目立つように刻印され、ロボットであるということを分かりやすくしている。これは人型ロボットの規制法の一つで定められているからである。
目立つ場所に人とは違う刻印がある彼女ではあるが、造形は美辞麗句を並び立てて余りある。俺が生まれた時に今は亡き父さんの趣味で購入されたものなので、高校生になった俺が好む見た目であることは遺伝的に仕方ないのかもしれない。
安心するような素朴な顔立ちでありながら、すらっと華奢な骨格を持ち、それでいて一般的なサイズに落ち着いたバスト。髪型は気分によってメンテナンス時に変えるが、今は栗色のショートボブだ。
仕事で朝の早い母さんを送り出し、今は俺とアイはソファーに並んで座りながらニュースを見ていた。
「本日、国際連合がAIテロとして注目されていた人工知能プログラム『I』を廃却する動きを発表いたしました。日本でも登録AIの思考プログラムを全削除、凍結すると――」
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