幼なじみ 1

10/17
前へ
/136ページ
次へ
「少量ずつでいい。バランスよく口に入れろ」 俺を見下ろす栄太の 黒目に じっと見つめられると 気持ちがそわそわして 見返せなくなる うん 頷いて 重なる目線を逸らした俺に 「ほら、口開けろ」 何の嫌がらせだ? 「睨めとは言ってない」 「自分で食える」 「お前の食い残しは俺の腹の中に入るんだ。焦らさずに噛み付け」 いや、まあ その通りなんだけどさ チラチラ 送られてくる 弁当組の視線が気になって 仕方ない 野々村なんて 箸だけを口に運んでるし 「先に食っていい」 「ほう? 俺が残したおかずは責任を持って義人が食うと」 「いやいや、待て」 ガシッ 栄太の骨太な手首を掴み 考える 俺から離しかけた玉子焼を 俺の口元へ 寄せてくる栄太には 俺に (あーん) させようとしてる自覚は ない様子 顔を赤くして 恥をかくのは俺だけ 栄太の黒目がちの瞳を 視界に 映してしまわないよう 薄く閉じた目蓋の下から 玉子焼の位置を確認して 「分かったよ」 首を少し傾げ 玉子焼に 唇を寄せ一口かじった
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加