幼なじみ 5

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「よしよし、拗ねるな」 奏太が俺の前髪を くしゃっと手で掴むから 額がスースーする 「ガキ扱いするなよ」 唇を尖らせ 文句を言う俺を見て 「ガキじゃん」 笑うタカヒロの口を 「お前もな」 コウジが手で塞いだ 「御堂は色目をつかい寄ってくる女を相手にしないんだろ?」 「うん」 「だったら原田に下心はないさ、安心しろ。愚痴はいつでも聞いてやる。惚気でも何でも、ドンとぶつけてこい」 グーで 自分の胸を叩いた奏太が 目を細めて笑った 公立の結果発表を待たず 迎えた卒業式 「あーあ、合否が気になって、卒業って気分じゃねえな」 会場となる体育館で 奏太が愚痴った途端 くすん 女子に混ざった低いすすり泣きが 聞こえてきた 思わず 前のめりになって 4人挟んだ先に座る奏太と 顔を見合わせた俺は 「ぜったいタカヒロだ」 言って笑った 感激やのタカヒロは 誰かが泣けば すぐにもらい泣きしてしまう それでいて ハンカチを持ち歩かないから 世話好きの 奏太とコウジの所持品が 増えていく 笑いながらも タカヒロを気にかけた奏太が ゴソゴソと ポケットを探る姿を見て 例年と 変化のない校長の挨拶の最中 俺の頬が緩んだ
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