幼なじみ 1

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暇だなぁ 何をして 時間を潰せばいいのだろう 勉強する気にはならないし 風に揺れる カーテンを眺めても 虚しさが募っていくだけ 「・・・・・・風呂に入ろ」 重い体を起こして 苦労して 上った階段を下りた 風呂釜の縁に座って ゆっくり 湯船の中に身を沈めていく まだ夕方の5時30分 いつもなら サッカーボールを追いかけてる 時間だ 目を閉じれば もわっと舞う砂ぼこりの匂いと 足音が響いてくる 「悔し・・・・・・っ、い」 昨日までいた グラウンドで俺も走っていた 細身の俺は 体重が軽い分スピードがある 外から俺 内から切り込んでマサピー 最後に奏太がシュート 声に出さなくても 目で見なくても ランニングと基礎トレを 励まし合い やり切ってきた仲間の 呼吸は 俺の呼吸と同じだった 《ドタドタ》 ん? 足音が響く しかも、近付いてきてる 《バン!》 荒々しく開いたドアに 驚きすぎて 反応ができない 「はあ?」 湯船に 足を突っ込んできた と思ったら 「・・・・・・っ、な に」 栄太の 厚い胸が目の前を覆った 温かく大きな体で 黙したまま 抱き竦められたりしたら ・・・・・・っ、く 馬鹿 我慢してたってのに 涙が溢れ出てしまう 声をあげて泣く 俺の涙と風呂の湯が 栄太の服に染みていった
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