幼なじみ 2

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少しだけ 影だけでいいから 栄太を見たい 窓枠に手をついて 眼下を 見下ろせば目が合った 「俺さ、木村っちにクラス委員と部活を両立させて後輩の見本となれ。って激励されたんだよ」 「奏太だけ?」 「いや、二年んとき、顧問の授業中に寝た奴らが」 グラウンドから 俺を 捉える栄太の強い眼差しに 心臓がドキドキする 手が震える 目の奥が熱くなる 手を振った 栄太に届かない手を 下へ向けて 一拍おいて 栄太が腕を高く上げ 手を振り返してくれた ヤバい。 嬉しい。 今すぐ栄太に駆け寄って 抱きつきたい! 「おいコラ、窓から落ちる気か」 焦った声の奏太の腕に ぐっと引かれ 浮いていた足が床に着く いてっ 膝がズキッと痛み 一瞬 閉じた目を開けただけの間に 校舎へと 駆け寄ってきていた栄太が 腕を頭上で交差させ 《バツ》 を形作った そりゃそうだ 俺だって気持ちが 高揚して脳が 麻痺していなければ 五階の窓から 地上まで 飛び降りて無事ですむとは 思わない 「あ、そうか」 「何だよ」 《バツ》を 作るためだけなら 此処まで くる必要はない もしかして、まさかだけど 落ちたら 受け止めてくれる気で いた?
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