55人が本棚に入れています
本棚に追加
世辞でもいいから
女子も
入れてくれたって
いいんじゃね?
「奏太はお前と逆。面倒見がいいから拭いて貰うことはあっても、俺が拭いてやったことは一度もねーよ」
「拭いて貰う?」
低い声を
更に低く響かせた栄太の
眉根が寄る
こ、怖っ
迫力に気圧されて
目線を
横へ逃がした俺を
「義人」
呼んだ栄太の
乾きかけの前髪をはらり
額に数本
垂らした顔がぼやけた
ふにゃふにゃの
柔らかな
感触が唇に触れて
離れていく
な な・・・・・・な
「何やってんの、お前」
言いながら
何をされたか
一番わかっているのは
俺じゃね?
そう気づいて
カーッと
顔が燃え上がった
「好きだ」
「は?」
『は?』のあと
何を言われたのか
分かった
分かったけど
突然
放たれた『好き』に
脳の理解が追い付かない
ぽけーっと
栄太を見つめ返すばかりの
俺に
丁寧に
ゆっくりした口調で
語りかけてきた
「ずっと好きだった。好きだから触れていた。一目惚れだったんだ。ガキの頃から義人のことしか見てない」
栄太の
耳に心地よく響く低い声が
じわりじわりと
胸に染み込んできた
最初のコメントを投稿しよう!