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衝撃を覚悟して
歯を食いしばったとき
武道場の屋根の上に
数人の人影が
あるのに気づいた
屋根から飛び降りてすぐ
駆けつけて
来てくれている
栄太が長い腕を曲げ
足で土を蹴り
目で追えない速さで
あっという間に
「最低な男だな。周囲を配下に固めさせ、暴力まで奮う気か」
「・・・・・・・・・えぃ、た」
俺と堀内の間に
栄太が割り込んできた
「義人もだ。俺の目を盗んで男の尻を追い掛けるんじゃねえ、糞ムカつく」
苛立ちを
吐いて捨てるような口調で
言った栄太の
「惚れてんだぜ、俺。分かってるのか?」
俺を抱く腕が優しい
「困った時は俺を呼べ。一人で対処しようとするな」
「うん」
「守らせろよ。義人を、恋人を守りたいんだ」
「・・・・・・・・・・、ん」
腕が、息が、震える
震える手を
栄太の背に回して
ギュッと抱き締めた
「ところで、アンタ誰」
俺を胸に抱いたまま
堀内に
顔を向けた栄太は
「堀内だ。年長者として言わせて貰うが、キミの態度は最悪だな」
「ご自分の態度を振り返ってみれば如何です?」
もの凄く冷静な口調で
「アナタが敬われない理由をご自身で、理解できるかもしれない」
堀内を馬鹿にした
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