幼なじみ 3

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薄い唇に押し当てた指で 俺の唇に 触れたりされたら じわじわと うなじを上がってくる 赤みを止められない 「え・・・・・・ぃた」 「もう少しだけ、触れてたい」 唇に触れる指の くすぐったさに肩を竦めれば 肩へ移動する 栄太の手 彼の触れかたは優しくて 愛情がいっぱいで 栄太に愛されてる そう実感して 自然と目が潤んできた 「仮装コンテスト出場は準備をって、放送がかかってるよ」 「分かってる」 俺の額に はりつく濡れた髪をそっと 指で横へ流して 栄太が真剣な顔をした 「迎えに来るまで動かないと約束してくれ」 「うん」 「返事だけは昔からいいよな」 「うるさい」 目尻に薄いシワを寄せ 笑う栄太の 吐息が耳にかかった 「愛してる」 俺にしか聞こえない 囁きを残し 離れていく栄太の温もり 呆れた眼差しを 俺たちに送りつつも 視線を遮る壁を 作ってくれていた奏太と コウジに 礼を言う声が 体育座りした膝に 顔を埋める俺にも聞こえた 涙が出る 好きという気持ちが 全身に広がって 愛おしいと思ったら 涙腺が緩んで どうしようもなくなった
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