幼なじみ 4

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膝の調子はいい 膝を気にせず自転車を 漕げるのは久しぶりだ 走る栄太の隣を 自転車で並走できるかも 気分が良かったのは ここまで 急に空気が変化した 無言の重圧を肌に感じる 何かがおかしい 暑さとは別の意味で 吹き出た汗が気持ち悪い ああ、そうか セミが鳴いてないんだ トラックの陰から そーっと覗いた公園で 七、八人の人影に 囲まれてるのは栄太だ 息が震えた 胸が早鐘を打つ 唇が冷たくなる それでも パニックにならなかったのは 呑気に 枝葉を揺らす木々に目を向け 微笑する 栄太に魅入っていたからだ 「さて、時間が長くなれば不利になるのはお前らだぞ。誰に頼まれたか聞き出したい気持ちはあるが、俺は手加減するのが面倒臭くなってきたし、違法駐車の取り締まりもされるだろう」 「余裕ぶっこいてんじゃねえぞ、糞が」 栄太の醸し出す威圧感に 腰が引けて 一歩を踏み出せずにいる男たちを 「弱い犬ほどよく吠える。最初に言った先達の意見に耳を貸し、助言するとしよう。今なら間に合うぞ、己の身の丈に合った生き方を選べ」 挑発するんじゃない バカ栄太!
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