幼なじみ 4

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上体が傾ぐほどの 強い平手打ちのせいで 耳鳴りがする 燃えるように頬が痛い 口の中に鉄の味が広がっていく あー、痛ぇ 栄太の集中力を削ぐような 悲鳴をあげなかった自分を 誉めてやりたい 栄太を守りたい 栄太が不利に立たされる状況は 絶対に作らない 心を占めそうになる恐れを 唾と一緒に 腹の奥底へ呑み込んだ 「急ごう、キミの前彼は予想してたよりも喧嘩が強いし、ズル賢い。一人くらい殴って怪我をさせてくれたら警察沙汰にできるのに、のらりくらりと交わすんだ。厄介な男だよ」 道路の向こう側 反対車線に停車する車に 堀内が手を振る 動き出した車に乗せられたら 堀内に 犯されるかもしれない ・・・・・・クソったれ この程度の恐怖に怯むな 必ず隙はできる チャンスを逃さず集中しろ 「喧嘩なら、両成敗じゃねえの?」 何事もなかったように 話す堀内に合わせ 自然な口調を心がけ問いかけた 「ところが、そうはならない仕組みになってるのさ」 何だ、それ 「どういう仕組み?」 首を傾げた堀内が笑う 「アイツが期待している奇跡は起こらない。とか、かもね」
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