幼なじみ 4

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「分かってます。絶対に言いません」 「絶対か・・・・・・、栄太はキミにとっても大切な存在なようだし、恋仲である今だけは、愛する人を苦しめたりしないと誓えるのかな」 口調は穏やかなのに 内容は辛辣だ 人の心理を見抜くこの人に 栄太への恋心を 言い当てられたことには 驚きはしない けど、腹が立つ 『恋仲である今だけ』 断じられたことに対し 「恋人である前に栄太は幼なじみです。大切な幼なじみを危険に陥れたりしません」 言い返さずには いられなかった 「いずれキミは栄太の友に戻るつもり、ならば今でも良くないか。私は亡くなった彼の父親の代わりに息子が道を外れれば、戻してやる義務がある」 冷たい何かが 胸の中を走り抜けていく 「親として将来、彼の娶る妻と生まれるであろう子どもを私は愛したい。それはキミのご両親も同じじゃないかな」 マスター・ヨーダに 突きつけられた言葉の刃は 容赦なく 俺の胸を貫通した 手が震える 足が震える 自分を自分で抱き締めても 小刻みな震えは治まらない 玄関に並ぶ靴 目尻に薄く刻まれた笑み 俺に甘えてくる栄太の 逞しい腕の感触 彼と過ごす一瞬、一瞬の 愛しさを 簡単に切り捨てられる感情と 思われたくない
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