幼なじみ 4

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何か言い返さなければ 栄太のいない この場で別れを託す男を 納得させる一言 「親が口を出していい一線を越えているかもしれない。でも・・・・・・、このままだとキミの存在は栄太の枷にしかならない。自分のことだけでなく、栄太の将来を考えてやってくれ」 こめかみが すうっと冷たくなった 唇が痙攣して 目眩を起こした俺の視界が ぐらついた 玄関ドアに腕をつき 自分の身を支えながら 胸の奥で ゴトリ 涙をせき止めていた板が 落ちたのを感じた 歯を食いしばっても 嗚咽が漏れそうな勢いで 涙が膨れ上がってくる 見せたくなかった 一滴の涙も マスター・ヨーダの前で 零したくなかった 「おい! どこへ行く、待ちなさい!」 靴を履かずに 玄関を飛び出した俺を 呼び止める声を無視して アスファルトの道を 家に背を向け駆け出した 足を踏み出すたびに 膝がズキッと痛んだ 追いかけて来られないよう 右折したり 左折したりを繰り返し 今いる場所も 方向も分からないまま 膝がガクガク震えても がむしゃらに走り続け 痛みで膝が 崩れ落ちたその場で顔を覆った 考えたくないし 思い出したくもないのに マスター・ヨーダの言葉が 脳内で繰り返される
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