幼なじみ 4

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『このままだとキミの存在は栄太の枷にしかならない。自分のことだけでなく、栄太の将来を考えてやってくれ』 栄太の将来を潰すのは俺 そう確信したかのような 言いようは 心底、胸に刺さった 「俺は栄太と暮らせないんだ」 声を漏らすと胸に どっしりと重い絶望が のしかかってきた 平らな道に横たわる俺の 涙の雫がアスファルトの色を 濃くしていく 栄太の人生に 無用な波風を起こしたくない 幼なじみに戻ろう。 祭りの手伝いを終えて 帰宅した栄太に そう言うだけで彼の将来は 保証される 目尻に薄くシワを刻んだ 栄太の笑顔を 思い浮かべ覚悟を決めるつもりが ーー義人 甘さを含んだ低い声まで 脳に響いてきて 栄太が恋しくてたまらなくなった 生暖かい風が背筋を 吹き抜けていく 何か、気持ち悪い 腫れぼったくて重い目蓋を 押し上げれば 陽の沈んだ空が見えた 「あーヤバい、心配かけてるかも」 起き上がろうと アスファルトに腕をつけば 首筋を伝う汗の 異様な熱さに身震いがした 夏風邪、引いたかも 汗に湿ったTシャツを 身に着けたまま泣き疲れ 眠ったのが悪かったのだろう 不快な悪寒が 背筋をいったりきたりしてる ここ、どこ? 闇雲に走ったせいで 自分の居る場所の検討すら つかない
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