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「おはよう。みんな来てくれてありがとうね」
母ちゃんだ
栄太が俺の手を握った
触れ合う指の先から
伝わるのは怒り
「そう怖い表情しなさんな。義人が入院するきっかけを作ったのはこの人だけど、堀内の関係先に乗り込んだアンタたちの尻拭いをしたのも、この人
見舞いにくるくらい、許してやって」
俺の手を包み込む手が
ぶるぶると震える
母ちゃんの頼みだから
否定しまいとして
父親の来訪に
拒絶反応を示す栄太の心を
落ち着かせてやりたい
栄太と繋がる
右の手を動かすため集中を
試みた
「彼女が私を通してくれたのは子を持つ親として、気持ちを分かち合えたからだ。まずは、その事を伝えておく」
足音が近づいてくる
花、だろうか
甘い香りがふわふわと
漂ってきた
「止まれ、そこまでだ」
思わず、カチンときて
冷静さを
失いそうになる栄太の
命令口調にも
「なぜ?」
動じないのは流石だと思う
「信用できない。堀内の行動に傷つき、弱った義人を追い詰めたアンタのことを」
・・・・・・栄太
「若い内ならやり直せる。彼はお前の将来を守るため身を引くことを選ぼうとした。だが、その考えに心がついて来なかっただけ。不幸にもね」
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