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「どんなに疲れても、二度と道路で寝ないのよ」
「はい。お世話になりました」
母ちゃんの同僚に
頭や肩を
叩かれている俺の横で
「私は今夜夜勤だし、うちの人も出張でいないから頼んだよ。義人のこと」
栄太も母ちゃんに
肩を叩かれていた
病院の前に停車するタクシーに
乗り込み
久し振りの我が家へ帰宅すれば
「お帰り義人」
栄太が開けてくれた玄関に
「うわぁ・・・・・・」
折り鶴の花束が置かれていた
不器用な栄太の
崩れた折り鶴の花束をそっと
「ありがとう。素敵だ、これ」
胸に抱えれば
テーブルの上にも
階段にも
浴室のドアにも
不格好な折り鶴の花束が
飾られているのに
気付いた
「ああ・・・・・・、栄太」
「義人のいない一日が長くて、苦しくて、何かせずにはいられなかったんだ」
リビングの明かりに照らされて
目元を少し
赤く染めた栄太の
「ちょっと、いやかなり下手くそだけどさ。彩さんの提案で折り鶴を花束にしたんだ。本物の花より、ぜったい喜ぶからって」
栄太が俺を想って
懸命に折ってくれた折り鶴の
花束以上に
嬉しいものは
この世に存在しない
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