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想い出の場所で
やあ。久しぶり。
君は相変わらず綺麗だね。
ここへ来るつもりはなかったのだけど、君に呼ばれたような気がしてさ。
あの日、ここで僕は君を...
耳を澄ますと、今でも君の声が聞こえる。
忘れようとしても忘れられないんだ。
それで…誰か来なかったかい。
僕以外にさ。
何を言ってるのかわからないって?
人違いじゃないかって…
そんなことないよ。
この場所に立っているのは、僕の愛する人なんだから。
誰も来なかったんだね。
それを聞いて安心したよ。
覚えているかい。
僕は君を心から愛していて、あの日、この満開の桜の下で僕は君に告白した。
君は笑ったね。
とても素敵だったよ。君の笑顔。
どうしたんだい。
手を離してくれって?
駄目だよ。
手を離したら、君は僕を置いて、ほかの男のところへ行ってしまうじゃないか。
あの日、君は肩に置いた僕の手を振り払って、ほかに好きな人がいると言った。
僕には何の関心もないと言った。
僕は君の笑顔が悲しくなった。
僕は君に言った。
君に愛してもらえるなら何でもすると。
僕の愛を受け入れてくれるなら全財産を君に捧げてもいいと。
君は笑って僕に言った。
もう二度とわたしの前に現れないで。
あなたとは二度と話したくない。
僕はとても悲しかった。
だから、後ろを向いて僕の前から立ち去ろうとした君の細い首に手をまわして、思いっきり締め上げた。
こんな風に。
ほら、もう逃げられないよ。
君はどこにも行かない。
僕と一緒にいるんだ。
もう君は僕のものさ。
ねえ君。
黙ってないで何か言ってよ。
さっきみたいに笑ってくれないか。
ねえ。
何だ。
また今年も違ったか。
僕の愛する人じゃなかったみたいだ。
じゃあこの女を、この満開の桜の木の下に埋めよう。
去年、この手で首を絞めた女と同じように。
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