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「…ほんまにすまん、藤咲」
また一言謝って俯いた。
不思議ともうすぐで死ぬのに怖ないわ
多分、藤咲に生命を捧げて死ぬからやろうな……
未だに眠っている藤咲に小さく笑って、小さく呟くと
「…俺の分まで絶対生きろや……生きれへんやったら許さへんからな」
最後に言い残した瞬間
ベッドの上の藤咲が僅かに動いたような気がしたが、それを最後に近藤の意識はなくなった。
「…俺の分まで絶対生きろや……生きれへんやったら許さへんからな」
藤咲は、少しずつ現実に戻っていこうとする夢の中でそんな声が聞こえた気がした。
するとふと目を覚ました。
「俺なんで……」
生きてるんや……目を覚ました事に驚きながらそんな事を思い、起き上がろうと少し身体を起こした瞬間
椅子に誰かが座っている姿が見えた。
俯いていて顔は見えないが、藤咲にはそれが誰かすぐ分かった。
「……近藤?」
起き上がってから座っている相手の名前を呼んだ。
しかしいつもならすぐに返ってくるはずの返事が返ってこなかった。
……まさか
「返事せいや!」
嫌な予感しかせずに何度も叫んだが、やはり返事が返ってこなかった。
嘘やろ……
近藤は、ベッドから降りて椅子の側に歩み寄った。
そして肩に触れようとした瞬間
近藤の身体が無情にも力なく近藤の体に倒れ込んできた。
近藤は、倒れ込んできた近藤の体を急いで抱き抱えた。
全く力が入っていない身体にだらしなく手が垂れ落ち、その同時に手から丸まった紙に床に落ちた。
倒れ込んだ身体を抱き抱えたまま近藤が床に落ちた紙を拾い上げた。
拾った紙をゆっくり広げてみるとそこには
【契約完了致しました】と近藤の名前が書かれていた。
「……契約、したんか…」
近藤は、契約書に書かれてた言葉を見つけて読み始めた。
「何やってんねんほんま……」
何が生命を捧げてでも、俺を助けたいや……
「だから……渡したくなかったんや」
俺だけ助かっても意味ないやん……お前がおらなともう何言っても変わらない事が分かっている近藤の頭の中で
(また一緒に漫才やろな)
入院してすぐ近藤と交わした約束を思い出した。
お前から約束したくせに
「先に死んでどうすんねん……」
考えたら分かるやろ……と近藤がした行動に悪態をつき、目から出そうになった涙を必死で堪えながら、小さく呟いた。
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