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そしてスタジオの外に出ようとした瞬間
藤咲……
「……!?……」
藤咲の事を呼ぶ声が聞こえて不意に後ろを振り返った。
しかし当然ながらそこには誰もいなかった。
でもあの声は……
「……近藤……」
相方に間違いない……そう直感した。
「………………………………」
おもわず胸に手を置いた。
【俺は、お前の中で生き続けるから……】
あの手紙に書かれていた言葉を思い出した。
ゆっくり目を閉じてしばらくしてゆっくり開けた。
「………明日休みなら……」
久し振りにあいつの所に行こかな……墓参りにそう心の中で呟きながら荷物を持ち直して
「……明日のためにプリン買いに行かな」
小さく笑みを浮かべながら呟いて歩き出した。
外に出ると雲一つなく、綺麗に晴れ渡っていた。
「………………………………」
今日の天気予報では、曇るて言うてたのにな……思いながらおもわず空を見上げた。
するとまた
藤咲……と呼ぶ近藤の声が聞こえた。
ふと気配を感じて前を見ると
「……近藤?」
藤咲の目の前に見覚えのある姿が……
「……なんで……」
驚きを隠せずそう呟くとそんな藤咲の反応に呆れたようにしかし可笑しそうに笑うと
元気そうやな、じゃあ明日待ってるからな……と藤咲に言う声が聞こえた。
そして瞬きをした瞬間その姿は、一瞬の内に消えていた。
「……まだ心配してくれてるんや、俺の事」
もう心配せんでもええのに……そう否定しようとしたが、なぜか目からは一筋の涙が流れていた。
「……何泣いてるんやろ……いつまでもこんなんやからあいつに心配してるんやろうな」
でも……頬を伝う涙を拭って近藤は、言った。
「もう心配せんでもええて……ちゃんと言いに行くからな」
近藤……最後に相方の名前を読んでまた空を見上げた。
「俺お前の分まで頑張るから…そして二人でやってた時よりも活躍してみせるからな!絶対に」
だからしっかり見とけよ!と拳を突き上げて空に向かって叫んだ。そして
「ちゃんとお前の分まで生きたるからな!あと……犬は、家で仲良う暮らしてるわ、相変わらず俺には吠えてくるけど……」
愚痴混じりにまた叫んだ。空を見上げたまま笑みを浮かべた。
「……よしっ」
はよプリン買いに行かな。大きな決意を胸にそう思ってしっかりとした足取りで歩き出した。
相方に助けられて訪れることの出来る明日のために……
そしてこれから訪れる数知れない未来のためにも……
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