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「言うとくけど中はみて見てへんから知らんで」
なぜか念を押される形に近藤は、ありがとうと言いながら封筒をポケットに仕舞うとじゃあまた明日来るわ。と立ち上がりながら告げる
「おう、無理ない程度に来たらええよ」
と手を振りながら病室を出る近藤を見送った。
近藤の姿が見えなくなったのを確認した藤咲は、泣きそうな表情に変わり、俯きがちに
「封筒の中身ほんまは見たんやで」
それにマネージャーから渡されたっていうのも嘘や。ほんまは……
「枕元に置いてあったんや」
自分の選択を決めるときが来たって置き手紙と一緒にな、と一人しかいない病室で藤咲の呟きだけが虚しく消えた。
その後苦しそうに胸を押さえて、静かにベッドに倒れ込む藤咲は許してくれ。と言いながら静かに目を閉じた。
病院の前で胸騒ぎを覚えた近藤がふと後ろを振り返るが突然ながら何もなく、気のせいかと自宅に戻ることにした。
藤咲から手渡された封筒の中身で近藤の運命の歯車がゆっくりと回りだした事はこの時はまだ知る由もない
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