一緒に夢を追いかける者

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タクシーから飛び降りるように病院に着くと 藤咲が入院している病室に向かった。 それも自分で驚くほど早く走って 途中で廊下を走っている事を注意されたのが聞こえたが、耳を傾ける気なんかぜんぜんなかった。 病室の前まで来ると勢いよく扉を開けた。 そこで見た光景は…… 「……藤咲!!」 昨日とは明らかに違う藤咲の姿だった。 「なん、で……」 『昨夜急に容体が悪化して……出来る限りの事は、しましたが今日が山かと……』 近くにいた一人の医師が俺の側に来てそれだけ言い残すと頭を下げて病室から出ていった。 「………………………………」 (今日が山かと……) その言葉で頭の中が白くなって立ち尽くした。 嘘やろ?…… 昨日まで普通に話してたやろ…… 「嘘やろ?……嘘やて言えや!」 心の中で否定しながら何度も藤咲に向かって話しかけるも返事が返ってくる事はなかった。 「…っ…なんやねん」 無意識に悔しさから小さく声を漏らした瞬間 パサッと共に突然藤咲の手から一枚の紙が床に落ちて落ちる紙を見つめていた。 「………………………………」 なんやろ……これと思いながらゆっくり近付いて床に落ちた紙を拾った。 「……これ……」 見つめた後に床から拾い上げた紙には見覚えがあった。 「……生命の契約書……」 なんでこんなもんが藤咲の手から落ちたんや……とそんな事思いながら手にした紙を眺めていると 「………………………………」 これ印鑑が押されてる…… よく見ると契約書と書かれた物には藤咲の印鑑が押されてあり、その下には【契約完了】と書かれてあった。 「契約完了?」 契約完了と言う文字が気になり、契約内容と書かれている欄を見てみると 【もう自分のせいで迷惑をかけたくない…だから楽に死なせて下さい。もう…本当にあいつには俺の事で自分の時間を割いて欲しくない……】 その欄には藤咲の字でそう書かれていた。 「何が……」 迷惑をかけたくない、やねん。迷惑なんか一度も思ったことない。と眠る相手に向かって否定して、更に話を続ける 「アホちゃうん?……こっちは、死んで貰ったら困るんじゃ……」 そう呟いて紙を握りつぶそうとした。
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