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その時、一番下の下手したら見逃すであろう所に
【この契約を取り消したいならもう一枚ある契約書で違う契約を交わせ……】と記されていた。
「もう一枚ある契約書……」
静かに読み上げたその瞬間
昨日藤咲から受け取った手紙を思い出した。
「……昨日ゴミ箱に入れたあれか」
じゃああの紙に俺が契約を交わせば……と思った同時にある事を思いつく
「藤咲は助かる……」
そう思った瞬間
俺は、藤咲が交わした契約書を握り締めたまま病室を飛び出した。
しばらくして近藤は、また家に戻ってきた。
走って戻ってきた為に上がった息を整えながら中に入っていき、一目散にゴミ箱へ向かった。
そしてゴミ箱に入れたあの手紙を取り出して急いで開いた。
「……あった……」
近藤が安心したように拾った紙を見つめた物には間違いなく
【生命の契約書】
そう書かれてあった。
「………………………………」
手に握り締めていた藤咲の契約書を近くのテーブルの上に広げ、隣に俺が受け取っていた何も書かれていない契約書を広げた。
しばらく二枚の契約書を眺める
【この契約を取り消したいならもう一枚ある契約書で違う契約を交わせ……】
「違う契約を交わせ、か……」
【この生命の契約書で交わされた契約は、絶対に果たされる】
「…絶対に果たされるんやったら」
願いは、ただ一つや……藤咲の契約書の書かれた言葉を信じるように近藤は決心した。
「あいつを助ける…たとえ俺の生命を犠牲にしてでも……」
そう小さく呟き、ゆっくり目を閉じてゆっくり深く深呼吸をした。
もう一度強く決心するとゆっくり目を開いた。
そしてペンを手に持って契約書に書き始めた。
【向こうが交わした契約を取り消して、変わりに契約を交わします。あいつを助けて下さい…俺の生命を捧げますから、あいつを…あいつの病気を治して下さい。俺は、あいつの病気が治るんだったら喜んでこの生命をあいつに捧げますから……】
全て書き終えると
あとは、印鑑を押すだけ……この印鑑を押したら
「藤咲が助かるんや……」
すまんな藤咲……心の中で藤咲に謝るとなぜか笑みがこぼれた。
「俺お前より先に逝くわ……」
小さく呟き、近藤は契約書に判を押した。
するとしばらくすると印鑑の下に
【契約完了】
と言う文字が浮かび上がった。
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