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そして
【契約完了】と書かれた文字の欄の下に
【契約完了時刻まで残り一時間】
と再び文字が浮かび上がった。
「…あと一時間」
じゃああと一時間で死ぬんや……とすぐに悟った。
「あと一時間で死ぬんやったら」
二枚の契約書を手に握り締めてまた走った。
藤咲のいる病院に向かって……
直接謝らないといけない。そう思ったから
それからどれぐらいの時間が経ったのか分からないが、息を切らしながらまた藤咲がいる病室に戻ってきた。
まだ少し息を切らしたまま病室の中に入り、藤咲が眠るベッドの近くにあった椅子に腰を掛けた。
そして息を整えながら契約書を見た。すると
【契約完了時刻まで残り三十分】
明らかに残り時間が迫ってきていた。
「あと四十分か……」
良かった。まだ少し時間あるな……三十分あることに安心してやっと息を整えた近藤は、ゆっくりと話し始めた。
「……俺お前に謝らなあかん事があんねん……」
眠る藤咲に向かって苦笑いを浮かべると
「俺な……お前の契約を取り消して、俺が契約を交わしてお前を助けて貰う事にしたから……俺の生命をお前にやって」
絶対何やってんねんて言うやろな……と付け加えて、話を続けた。
「…俺がまた一緒に漫才やろて約束したのに無理にしてもうたな……でもそれでも」
それでも俺は、お前を助けたかった。と
「藤咲お前には生きて欲しいんや」
そう言った。
その後手に握り締めて握り締めていた契約書をまた確認した。
【契約完了時刻まで残り二十分】
もう十分経ったんや……そんな事思いながら自分が書いた契約書ではない方の契約書の裏に近くのペンを手に持って書き始めた。
どうして書き残したい事があるから……多分俺が死んだ後に目を覚ますやろうし、そんな事を考えながら全て書き終えると簡単に折って棚の上に置いた。
俺のキャラやないけどなまた苦笑いを浮かべて、全ての作業が終わった頃に俺の契約書を見ると
【契約完了時刻まで残り五分】
もうあと五分しかないんや……
そして自分の契約書を丸めて力強く握り締めた。
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