第2章 森本陽菜から見た世界

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堂守小学校3年2組。 私はクラスに気になる男の子がいる。 斜め前に座っている、小野康太くんは、いつも一人で絵を描いている。 気になり始めたのは、夏休みの宿題で小野くんが描いた絵を見てからだ。 テーマは「夏休みの思い出」だったから、私は家族で動物園に行って、キリンの絵を描いた。 小野くんは、赤と黒と紫の色がグルグルになった絵を先生に出していて、先生には、「真面目に描きなさい」って怒られていたけど、私はその絵から目が離せなくて、でも、その絵を見ていると悲しい気持ちになった。 ーある日の授業中ー ふと、小野くんの方を見ると、誰も近づかない校庭の花壇を見つめている。 「花が咲かないかな」 ボソッと呟いたのが聞こえた。 ー掃除の時間ー 校庭をトンボで整地していると、ふと花壇が目に入った。 今まで、その花壇を手入れする人も、花の苗を植えている人も見たことがないから、花なんて咲くわけがないと思った。 「そもそも、太陽の光が当たらないんだから、花なんて咲くわけないじゃない」 でも、小野くんの淋しげな表情が気になり、ジョウロで花壇に水をあげた。 「初めて、ここにきたけど、荒れてるな。 これじゃあ、誰も近づかないのも分かるわ。でも、もし、花が咲いたら、小野くんは笑ってくれるのかな」 小野くんと同じクラスになって、半年過ぎるが、私は彼が笑った姿を見たことがない。 ふと、彼が笑った姿を想像してみる。 「全然、浮かばないや」 教室に戻ろうとした時、怒鳴り声が聞こえた。 「ここで、何をやってるんだ!」 真っ赤な顔をして、走ってきたのは、小野くんだった。 「何って、花壇に水をあげてるんだけど…」 「ここには、近づくな…」 何秒が花壇を見つめ、小野くんは去っていった。 「何なの!!」 喜ばれることはあっても、怒鳴られると思ってなかったので、小野くんに対して、怒りが込み上げてきた。 「もう、知らないんだから!!」 ー4時間目ー 斜め前の小野くんを見ると、さっきの怒った顔とは別人のように、静かに授業を聞いている。 (何よ!別人みたいに!…それにしても、あんなに大きな声も出せるんだ) もう、知らないと思ったけど、小野くんのことがますます気になり始めていた。
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