ちょっとお遣い行ってきて

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ちょっとお遣い行ってきて

「ちょっとお遣い行ってきて。」 母からメモを渡された。 そこには母の大好物であるスライムの奈良漬けと書かれていた。 「わかった」と返事をした僕は、去年の誕生日に父から貰った上級ドラゴンの皮のリュックに、母から受け取ったメモとお金、そして、ついでに自分の好きなものでも買おうかと思い、おこづかいを少しばかり入れて、 「行ってきます」 と一言、家を出た。 スライムの奈良漬けが売っている低級魔族屋までは、徒歩で半時ほどかかる。 道中に立っている木々も、その葉を木枯らしに攫われ、風におられ、寒そうに震えいる。 吐く息は白く、今にもあのどんよりとした雲が落ちてくるのではないかとさえ思われるような天候である。 自分の吐息で、指先をいたわりながらトボトボ歩いているうちに、低級魔族屋に到着した。
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