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2 再会
「そろそろ昼休みにしようぜ」
同僚がにっと八重歯を見せて笑う。
つられておれもぎこちなく笑顔を作りながら頷いた。
彼はおれより3つほど年下だが、仕事歴はおれより長いのでおれにはタメ口。
突如現れた過去も何も話さないない不審なおれにも人懐っこく話しかけてくれるいい奴だ。
ペンキで薄汚れた軍手を外し、車にあるコンビニ弁当に手を伸ばす。
彼は寒いので車内で食べると言って助手席に座った。
おれは車から少し離れたところに腰を据え、弁当の蓋を開ける。
割りばしを二つに引き離しながら、再び空を見上げた。
「.........」
いい天気、そう発したつもりだったが、喉からは空気が漏れただけだった。
そっと、自分の喉に触れる。
失声症。
このおかしな状態は、そう呼ぶのだと医者から聞かされた。
精神的なもの、つまりはストレスからくるものということで、いつ治るかなんてのは人それぞれ。
分からないのだという。
おれは視線を弁当に戻し、せっかちな同僚にどやされる前に早めに昼食を済ませようと箸を持ちなおした。
「……せん、ぱい?」
真昼間の住宅街。
静けさの中に似つかわしくない若い女性の声が耳に入る。
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