3 冬の始まり

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なぜ地元が車社会なのに免許を持っていないのかという疑問点に関しては推測になるが。 高校卒業後に即上京、そしてそのまま関東で就職したためなのだろうとあえて聞かずに。 そのメッセージから次の土曜日、親戚の車を借りてヒュウガの言う温泉を目指して走らせている。 休日なんて普段外に出ない自分が他人と遠出など、親戚含め自分が一番驚いていた。 気晴らし、というのだろうか。 ここに来たときにも親戚は何度かそういっていろんな場所に連れ出そうとしてくれた。 あの頃はまだそんな気分になれなくて、そのうえ腫物に触るような態度をとる周囲に嫌気が差して休日をぼんやりと部屋で過ごしていた。 そのうちに誘いはなくなり、交流も減り、今では必要最低限の話をするまでだ。 それならばどうして今回この後輩の誘いに乗ったのか。 偶々気が向いたのか、昔のように、何かを変えないといけないと、そう判断したのか。 「せんぱーい?聞こえてますか?ちゃんと集中して運転しないと危ないですよ?」 ヒュウガの声で我に返り、前を向いたまま頷く。 「考え込む癖って、昔からぜーんぜん変わりませんよねぇ」 横ではヒュウガがうきうきとひたすら話をしていた。
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