4 過去の記憶

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ぼんやりとベッドに横になっていた体を起こし、部屋の片隅にひっそりと存在している黒いケースを見つめる。 音楽を続ける道を諦めても、それだけはどうしても処分できなかった。 おれが、初めて自分で購入したギターが、そこには収まっている。 立ち上がり、ゆっくりとケースの前まで歩いていく。 右手でケースに触ろうとして、やめる。 気付くと呼吸が乱れていた。グルグルと景色が回り始め、その場にしゃがみ込んでしまう。 こうなるとダメだ。観念してそのまま横になる。 幸い今日はそこまで冷えていない。このまま床で眠ってしまおう。 昼間だろうが関係ない。 どうせヒュウガにでも誘われなければ、予定なんてないのだから。
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