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まさか自分に対してものではないと思いつつも視線を弁当から声の主に持っていった。
すると眼前に、眩しいくらいのひまわりみたいな色をした髪をして、大きな瞳をめいいっぱい開いた小柄な女性がこちらを見つめているではないか。
仕事の知り合いだっただろうか。
いや、『先輩』といった筈だ。
おれの地元は神奈川なので学生時代の後輩というわけでもなさそうだが。
だってここは、関東と何の関係もない離れたド田舎だ。
「井庭先輩…ツカサ先輩ですよね?!私、覚えてませんか?大学のサークルの、ヒュウガです!」
女性が鼻息荒く、ほぼ叫びに近い音量でおれに接近してきたものだから思わず弁当を落としかける。
大学のサークル?ヒュウガ?確かにいたような、いなかったような。
しかしなぜ、彼女がここに。
「話しませんでしたっけ?忘れちゃったか。ここ、わたしの地元で…家もすぐ近くなんです。すごい偶然…こんなことあるんだ!」
ヒュウガは興奮冷めやらぬ様子でおれの前で嬉々と喋り続けた。
言われてみれば、ここの地域の名を出していた後輩がいて、親戚が住んでいると話をしたら喜んでいたなんてことがあったような。
外見は、ちっちゃくて、くりくりした大きな目にひまわりみたいな色したムロみたいな癖毛。
そうだ思い出した、ころころとよく笑う奴で、いつも後ろを付いてきていた。
名前だけがどうもしっくり来ず、下の名は失念してしまったが。
卒業してからだいぶ経っているにも関わらず1ミリも外見が変わっていない。
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