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夜。
夕飯も食べ終わり、世話になっている親戚家の縁側で缶ビールを開けながらメモを眺めた。
あの後、同僚には大学の後輩だとだけ告げてそれ以上は無視を決め込んだ。
彼はおれが音楽に携わっていたことは知らない。
余計なことまで話をしたくなかった。
ヒュウガは、音響の仕事をしていたが事情があって戻ってきた、と言っていた。
事情、仕事を休んでまで帰郷する事情。
何にせよ、おれの『事情』にまで深く突っ込まずにいてくれた後輩に聞けるはずがない。
「絶対連絡」の言葉を思い出して、アプリを立ち上げる。
『イバだ。今日は、驚いた』
返事はすぐにきた。
『もう!遅いですよ!連絡、くれないかと思いました』
メッセージの後にクマが怒ったようなスタンプがついてくる。
『ごめん、仕事が長引いた』
嘘をつく。ビールを飲んでいた。
『お疲れ様でした!でも本当に偶然。まさか先輩に私の地元でお会いできるなんて思ってなかったです』
それはこっちのセリフだと思いつつも、昼間ヒュウガの言葉から気になったことをぶつけてみた。
『おれ、行方不明ってことになってるのか?』
『あ、もちろん週刊雑誌とかでーとかそんな大事にはなっていませんよ?ただネットでは先輩以外、みんな活動してるから…行方不明説が噂になってるって程度で』
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