128人が本棚に入れています
本棚に追加
確かにメンバーには、というか両親以外の誰にもどこに行くかは言ってなかった。
しかも実家の神奈川ではなく親戚の田舎だ。
何度か音楽番組に出演させてもらたといっても知らない人は知らない。
すれ違っても身バレすることはないだろう。
どこに行ったか知れないイコールそうなるのは必然だ。
『わたしはね、実家の母が病気しましてー、でしばらく帰ってきてるんですよ』
なんなく、おれが聞きづらいと思っていた『事情』を話すヒュウガに拍子抜けしながら、『そうか大変だな』と当たり障りなく返事を送る。
『実はね、親戚の方がこちらにいらっしゃるってこと覚えてたから、もしかしたら先輩に会えないかなって、不謹慎なことも考えてました』
『こんど、先輩に会いに行きますね』
酔いがまわってぼんやりする視界の中、その文章だけ目を通してそのまま縁側で眠りについた。
そしていつもの、あの頃を繰り返す、夢の中へと落ちていく。
最初のコメントを投稿しよう!