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和佐 「文学部でしょ!分らないの?」
懸命にスマホで検索する文夏。
文夏 「分らない・・・」
〇 マンション 文夏の部屋 その後
シルバーのインテリア、高層階から見える霞んだ灯の点滅
する街。
ガラスに写る和佐、前髪の集まりを解している指先。
袖の余りが溜まって、腕を太く見せる。
ベッドの布団にうずくまり、顔だけを出している文夏。
和佐 「誘拐魔・・」
〇 水族館 日替わり
(イルカのプール)
クリスマスのイルミネーション、イルカショー華やかな
光が映る和佐と正明。歓声、どよめき、笑顔。
XXX
(ペンギンの水槽)
柵に寄りかかり、観るふたり。
和佐 「ペンギンは飛べない鳥・・でも泳げるね」
正明 「イルカは動物なのに泳げる」
和佐 「でも、鼻が背中だよ(嘆き)・・」
正明 「かわいそう?」
和佐 「雷鳥も鳥だけど、飛べないんだ」
正明 「なぜで山に居るんだろ?」
和佐 「逃げるんじゃなくて、隠れるほうを選んだんだ」
ストローのオレンジを、お冷のコップに垂らす。
正明 「野生の生き物は大変だね」
和佐 「・・・」
〇 屋外展望台
風に乱れる和佐の長い髪、飛び交う海鳥。
和佐 「飛べる鳥はいいなぁ・・」
空を見上げる。
正明 「・・お待たせ。。」
駆けつける。
正明 「これ!」
袋からペンギンのぬいぐるみを出す。
和佐 「ペンギン・・」
正明 「イルカ・・の方が良かったかな?」
和佐 「・・・」
正明 「分った、替えてもらって来る」
和佐 「違う!・・私、鳥が好き、飛べない鳥が・・」
ペンギンのぬいぐるみを抱き締める。
正明 「なんで?」
和佐 「私も同じだから・・」
正明 「どう言う事?」
和佐 「雷鳥は・・・、寒くなってきた!行こう!」
正明の腕を引く和佐。
〇 高原 森の中の道 その後
ヘッドライトに浮かぶ、木々のトンネルの道、走る黄色
い車。
〇 高原 森の一軒家 その後
暖炉に火、他に光はない、炎はその艶めかしさゆえに
近づきがたい、しかし離れがたい。
その炎の前、毛布をかぶる和佐と正明。
正明 「寒くない?ストーブすぐ暖かくなるから・・」
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