EP1  天空

2/10
前へ
/40ページ
次へ
〇 山小屋 夕方 夏     受付に、遠藤(65)、やってくる文夏と正明と数名。 遠藤  「個室ですね、夕飯はすぐに?」 文夏  「お願いします」 正明  「・・そうだよ!、みんな一緒だよ!」     と、後ろの男と話す、ざわめく一行。 文夏  「どうした?」 正明  「こいつらが、個室って一人一部屋じゃないかって!」     うなずく一行。 文夏  「後で、ゆっくり話を聞くか・・」     一行をふり見て文夏。 後輩A 「先輩・・別荘に行くみたいなものだって・・ハード     すぎます・」     背を丸め、息を切らす。 文夏  「別荘だよ!なぁ正明?」     正明の眼に同意の視線。 正明  「そうだよ、家と同じ」 文夏  「俺達には、帰る場所がある、そして家族がいる・・     だろ(ニヤリ)」 遠藤  「・・・どうぞ」     手のひらで合図して、入室を促す。 文夏  「(うなずき)行こう」 正明  「(大声で)ただいま!」 後輩A 「(真似して)帰りましたぁ!」 〇 同 食堂 夜     食事をする文夏、国広、後輩たち他数名の客。 後輩B 「森林限界過ぎた辺りから、ヤバイぞと・・」 後輩A 「俺も、けもの道に迷い込んだアリスの気分だよ」     天を仰ぐ。 文夏  「ペンキ印に導かれなきゃ、俺らの行く水は・・」 正明  「分水嶺に立って、ションベンするなら、バラバラだ」     不機嫌に皿を片付け始める礼子(54)。 礼子  「次のお客さんが待ってますので、そろそろ・・」 文夏  「ソーリー・・みんな行くぞ」     椅子を引き立つ。 正明  「ごちそうさま・・」 後輩A 「朝何時?」 後輩B 「ご来光見えますかね?」     コソコソと退席する一行。 〇 山小屋前 翌早朝     薄暗い空、稜線にスカイライン。     歩き出す文夏一行を見送る従業員達、その中に    和佐(20)。ジーンズにトレーナー、長い髪を束ねている。     何も動物の声さえしない、ただ、歩く文夏らの石を踏む    音を残している。 遠藤  「また来るかな、奴ら・・」     腕を組み、睨みつける。 礼子  「帰ってくるでしょ、ここが好きなら」     小さく手を振り。 和佐  「晴れだぁ!・・うん!ここなら宇宙に一生懸命モールス     信号送ってみたくなるね!」 礼子  「・・モールス?」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加