EP1  天空

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    県消防防災ヘリコプター「アルプス」の赤い機体が、    遠く飛んでいくのが見える。 礼子  「誰か、救助されたのかな?・・」 和佐  「ご苦労様、ありがとう」 礼子  「ありがとう」     ヘリの残された鼓動が風に消えていく・・・。 〇 登山口 日替わり 秋~冬    登山口に泊められた車、登山道に降り積もった焦げた色の   しおり達、閉鎖されたゲートの支柱を抱きしめるように避け   ながら、和佐と礼子他の山小屋の従業員たちが下山する。    XXX    車が一台、二台と走り去ると、深く白い靄が湧いてきて、   登山口の駐車場を雲の中に包括する。    XXX    薄く、雪が模様を描くアスファルトの駐車場、小さな鳥が   ついばむ声が結晶の一粒一粒をダンスさせるが、風がそれを   許さない。 〇 都会 居酒屋 その後 冬     カウンターに店長の茂木(59)、入ってくる文夏と正明    他。 茂木  「いらっしゃい」     ちらりと文夏たちを見て。 文夏  「まいど!」     カウンター前の客に遠慮しながら奥に進む。 茂木  「和佐ちゃん!二階準備して!」     顔を出す和佐。 和佐  「はい・・」     文夏と正明の顔を見る。 和佐  「・・いらっしゃいませ・・」 〇 居酒屋 二階座敷 その後     座卓を拭く和佐。 和佐  「ちょっと待って、今準備します・・あっ」     文夏が、その手からフキンを取り。 文夏  「いいよ、オレが拭いとくから」 和佐  「それは・・」     しばらく、立ったまま文夏の動作を観察する。 文夏  「新入りだね?おれらここの常連だし・・」     座卓を勢い良く拭きながら。 正明  「そうそう、だから・・ほらお前ら、座布団!」     座布団を円盤のように放おると、各々並べる。     XXX     料理を運ぶ和佐。 正明  「いつから?」     和佐の動きに合わせ、眼を見ようとする。 和佐  「土曜からです」 文夏  「大学のワンダーフォーゲル部、通称ワンホ・・」 和佐  「・・・」 正明  「知るか・・だよね」 茂木  「通称、道楽部だろ、お坊ちゃまの・・」     と、すれ違い、部屋の前に皿を持ち。 和佐  「・・・」     と、奥から調味料等を運ぶ。 正明  「ひどいな・・・」 文夏  「ほんとだよ」     座卓に正座して待つ一行。
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