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「どうしてだ。もうそんなことを言う仲でもないと思うけど」
女性の向かいにどっかりと腰掛けた男の方は、そう簡単に引き下がるつもりはないらしい。ああ、まあ、いるよなあこういう男。内心呟きながら、ベルを押して店員を呼び「バニラアイス追加で」とオーダーした。
「どうしても。あたしはあなたのこと、恋人として見ることができない」
「どういうことだよ。これまで仲良くしてたのは遊びだったっていうのか」
「仲良くしてたって…」
「二人だけで遊びにも行ったし、旅行にも行ったじゃないか」
話だけを聞いていれば、確かに男が勘違いしそうな要素は揃っているように思う。別にそうしたからって、イコール恋人として見ることができるか、なんていうことはわからないのに、まあ都合のいいように解釈したくなるのが、男という生き物なのでしょう。
「もしかして、誰にでもそうしているんじゃないだろうな」
「まさか。してないよ」
「じゃあなんで俺にだけはそうしてたんだよ。思わせぶりなことしてさ」
女の方は、俯いた。横目でちらりと見やると、なかなか整った顔立ちをしている。わたしなんかと比べたら、顔はアイドルみたいに小さいし、大きな瞳を潤ませながら、俯いて唇を尖らせている姿は、なかなかにキュンとする雰囲気がある。わたしはバイセクシャルではないけれど、くしゃくしゃと頭を撫でてやりたくなる感じだ。
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