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「はっきり言うけど、あんたにだけ思わせぶりな態度をとってたわけじゃないわよ。そりゃあ、勝手に電車や飛行機のチケットまで取られて、果てはホテルまで予約されてたら、さすがに行かないと申し訳なくなるってもんでしょ」
なんだそれ。男の方もすごいが、女も女だ。そんなもの、勝手に予約されたんだからキャンセルしてやればいいのに。女はまくし立てるように続けた。
「でもあんた、初めての旅行なのにいきなりダブルベッドの部屋取るとか、あたしのことなんだと思ってんのよ。誰にでもホイホイそういうことさせる女だとでも思ってたわけ」
「いや、あれは―」
「あれも何もないでしょ。部屋変更して別々の部屋にしても、延々あたしの部屋に居座って帰らないし。果ては夜中の十二時に『トランプしようぜ』って何? 今時そんなの修学旅行でもしないわよ」
すごい剣幕の口調と相まって、その内容が馬鹿馬鹿しすぎて、野菜ジュースを噴き出しそうになった。それは確かにたまったもんじゃない。
「遊びに行く時だって、散々あたしの希望を聞いておきながら、最終的には『やっぱり○○にしよう』って自分の意見ばっかり通すでしょう。そういう中途半端な彼氏面する男、あたしは大嫌いなの」
そう吐き捨てると、女はテーブルに千円札を叩きつけ、鞄とコートを引っ掴んで、席を立つ。
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