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「それからしばらくしてかな。私はもう生まれていた。この国の犯罪や自殺にお父さんの作った銃が最も関与しているというデータが問題視され始めて、連日、家にはライターやメディア関係者が訪れるようになった。適用年齢の引き下げについて議論されてた頃ね。最初は無愛想に追い払うだけだったけど、手を変え品を変えで取材を試みる姿勢に無視ができなくなってきた。家の中に盗聴器なんてザラで、私なんて誘拐されかけたこともあった」
当時の記憶をよみがえらせる事に集中しているのか、光木は足元のくすんだタイルを凝視していた。僕に話しているというよりは、足元の文章を朗読しているかのようであった。
「知ってた? 銃の細かい部分が毎年変わっているのは、お父さんみたいな設計士のための配慮なんだよ。毎回違う人が手を加えてるんだって。自分だけが全部悪いわけじゃない、っていう意味をもたせるために。罪悪感の希釈だよね。処刑所で押されるボタンと同じ」
「……」
「その後、結局お母さんとお父さんは離婚したんだ。お母さんは再婚して実家で暮らしているよ」
僕へ向き直した。遠くでクラクションの音がした。
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