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僕は来場されたすべての人々から視線を受けながら、準備していた国民拳銃を手に取った。
「僕と君で1発ずつの銃弾が手に入った。2っていうのは、どういう数字なんだい?」
光木はクリスマスの晩で自分が言った言葉を思い出したのか、数秒したのち、いじわるそうに笑って答えた。
「2は数字の始まり。数えることができるようになった数字。対となる数字。私と君。そして、前進の数字」
僕は国民拳銃を天に掲げた。
使用申請書の動機については、「自分探しの終焉。新しい始まりを祝うための祝砲」と書いた。光木には「中学生みたい」と笑われたが。
「もう一発は必要な時まで取っておいてくれ」
銃が、必ずしも人や自分を殺すだけの道具ではない。人以外だって撃ち抜ける。結局は進化の過程で、人が殺すだけにしか使わなかっただけの話だ。
薬莢にはすべてを詰め込んだ。それまでの全部と、これからのありったけを。手に余った分は、二人でゆっくりと処分していく。
撃鉄を起こした。いちについて、よーい。
破裂音がした。どん、と反動が腕を伝った。耳鳴りが起きた。
僕が、国民の生涯に一度の権利を行使した後、シワの増えた母は言った。
「あんたやっぱり、お父さんに似てるね」
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