本編

21/21
前へ
/21ページ
次へ
 僕は来場されたすべての人々から視線を受けながら、準備していた国民拳銃を手に取った。 「僕と君で1発ずつの銃弾が手に入った。2っていうのは、どういう数字なんだい?」  光木はクリスマスの晩で自分が言った言葉を思い出したのか、数秒したのち、いじわるそうに笑って答えた。 「2は数字の始まり。数えることができるようになった数字。対となる数字。私と君。そして、前進の数字」  僕は国民拳銃を天に掲げた。  使用申請書の動機については、「自分探しの終焉。新しい始まりを祝うための祝砲」と書いた。光木には「中学生みたい」と笑われたが。 「もう一発は必要な時まで取っておいてくれ」  銃が、必ずしも人や自分を殺すだけの道具ではない。人以外だって撃ち抜ける。結局は進化の過程で、人が殺すだけにしか使わなかっただけの話だ。  薬莢にはすべてを詰め込んだ。それまでの全部と、これからのありったけを。手に余った分は、二人でゆっくりと処分していく。  撃鉄を起こした。いちについて、よーい。  破裂音がした。どん、と反動が腕を伝った。耳鳴りが起きた。  僕が、国民の生涯に一度の権利を行使した後、シワの増えた母は言った。 「あんたやっぱり、お父さんに似てるね」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加