萬『八百屋』

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――・・・ 「ぃさん…おにぃさん!!」 「はっ…!?」 呼び掛ける声に気付くと、俺は飲み屋街から少し離れた路地に座っていた。あれ?俺、はっぴゃくやに居たハズじゃ…? 「学生さん?酔っぱらっちゃったの?大丈夫?」 見上げれば俺はお巡りさん二人に囲まれていて、人生初の職質をされてしまった。 「身分証明書ある?」 「あ、ハイ学生証が……っ!?」 財布を確認すると学生証はあったが、お金だけキレイに無くなっていた。 「はいありがとね。こんな所で寝てたら危ないよ。早く帰りなさい!」 「あ、ハイ!すんませんっす!」 お巡りさんに促され立ち上がると、俺はそそくさと逃げるように家路についた。 金が無いのははっぴゃくやで買い物をしたからだとして、買ったモノが手元に無いって言うのはどう言うことだ?もしかして俺が酔っぱらって見た夢だったのだろうか…? うわー…まじか。寝てる間に金はスられたってオチか?それにしてはやけにリアルな手触りが記憶に残るけど。 摩訶不思議な夢の余韻に首をひねり一人暮らしの部屋へ帰ると、はっぴゃくやは夢ではなかったのだと俺は確信した。 リビングのテーブルには、 あの中学の時に使っていた筆箱みたいな大きさの箱が置いてあったから。
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