萬『八百屋』

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―――・・ガキンッ………!! タケを想って、俺ははっぴゃくやで運命を切るハサミを13,061円で手に入れた。 タケを思って、タケの気持ちに謝りながら断腸の思いで俺は俺達の赤い糸をそのハサミで切った。 それなのに、何故か糸は切れなかった。 「は…?えぇ~??」 糸をハサミの刃に挟み力一杯切ろうとするが、糸が切れる気配は皆無だ。それどころかこの糸はまるで金属でも切ろうとしているような感触だった。 「え、え?なんで?」 軽くパニックになっていると、赤い糸はタケの方からスーッと姿を変えていった。 「え?!なんだこれ!?」 普通の糸だった俺達の糸は、みるみる頑丈そうな糸に変わっていった。 糸…というよりコレは…ワイヤー!?俺はパニックになりながらも何度も挟んでいると、ガチガチと鳴る金属音にタケが動いた。 「うぅ~ん…ん?」 しまった。起きてしまった。でもタケにはこの糸もハサミも見えてないはず。多少俺が奇行を働いてもわからないはず!覚醒してしまう前になんとかこの糸を切らなければ。 「くっ…クソっ!」 真っ赤になる程手に力を込めていると、目を擦ったタケがボーッと俺を見た。そして一瞬の間を置いて、俺の奇行に気づいたタケは一気に目を開いて言った。 「ちょっ…何してんだヨシやめろ!!」 俺にしか見えない筈の赤い糸(ワイヤー)。それを、タケは引っ張った。
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