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だから、カミングアウトなんて絶対にしないとその時心に誓ったんだ。なのに何故かタケにしてしまった。
騒がしい居酒屋で、一気に酔いが冷めた俺とタケの間に一瞬できた間。その一瞬で『人生オワタ』と思った俺とは真逆に、タケはフニャッと笑って「そうなん?それは、大変だったねぇ。」と、応えた。
子どもみたいに笑いながら。
高い背にガタイもいいタケの手はやっぱりでかくて、その手でわしわし撫でられた俺は暫くポカーン状態だった。
人当たりのいいタケは、大学でもよく人の中心にいて、あんまり人と関わりたくなくて角にいた俺にもよく構ってくれた。
だから思ったんだ。酒が入ってもいつもと態度が変わらないタケなら、もしかしたら違うんじゃないかって。
あいつとは違う反応を示してくれるんじゃないかって…。
……で、予想以上の反応にまんまと惚れた俺。俺の馬鹿!
でも仕方ないんだ。あの時は人嫌いになっててでも一人は寂しくて、少し話すようになってたタケにサークルの飲み会誘われたら嬉しくて。
仕方ないんや!寂しかったんや!!
「…ヨシ、もうカレーなくなってるけど…」
「…え?」
あの時を思い出しながらがむしゃらに食べていたら、カレーがなくなってるのも気付かなかった。
とにかく、そのくらい俺はタケと飲みに行くのが嫌なんだ。あの時を思い出して堪らなくなるから。
「ねぇー、ヨシ~!やっぱ行か」
「行かない!!」
だから俺は、タケの誘いを断り続けた。
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