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「はっぴゃくや~?」
タケと大学で別れてから数時間後。俺は駅裏の飲み屋街のあるバーに来ていた。
「そう。マスター知らない?」
行きつけのこのバーはゲイの客が多い。別にゲイバーじゃないんだけど、マスターがゲイだとカミングアウトしているので、自然と噂を聞いてゲイの客が増えたんだとか…俺もその一人だけど。そのマスターに『はっぴゃくや』の話を知らないかと聞いてみた。
「なんか、今一番欲しいものが売ってるんだって。都市伝説だけど。」
「あぁ!なんか聞いたことある!」
「まじで?!」
バーのマスターが聞いたことあるなら噂は大分ひろまってるんだろう。
「興味あるの?」
「いやまぁ…と、友達に聞いて。」
「ともだちぃ~?」
ニヤニヤするマスターが憎らしい。だけど、マスターは俺が唯一タケの事を話せる人だ。中々無いだけに、こんなやりとりが少し嬉しい。
「んで?そのはっぴゃくやってのに行きたいの?」
「ん~…、もしあるなら、行ってみたい。」
「何が欲しいの?やっぱり彼関係?」
マスターが更にニヤニヤし始めた。やめてくれ。
「ん~、まぁ、そうなんだけど。」
「うわっ!甘酸っぱい!いいよいいよ!キュンキュンする!」
マスターには長年付き合ってる弁護士の彼氏がいるらしい。だから、まだ付き合ってもない俺の話が楽しいらしい。
「で?で?何々脈ありそうなの?媚薬でも買う?」
「いや、違うけどw」
「なにそれ欲浅っ!!全然キュンキュンしない。もっとガツガツ行けよー!」
「えぇ~?」
マスターは、もっと甘々な片思いの話を聞きたかったらしい。だけど現実はすっげー苦い。
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