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響いた銃声と共に執事の足に絡み付いていたモーリスの腕が弾けるようにそこから放れた。
「くうっ…娘を…娘だけはっ…お前にも娘がいるだろうっ──!」
「……っ!?…う、うるさい、早く死ねっ…死ねっ…死ね──っ!」
苦し気に悶えながらモーリスは後ずさる執事の足を掴もうと床を這い寄る。
執念の目を向けたモーリスに執事は一瞬背筋を震わせていた。
怯えた執事の銃口がモーリスの額を掠め、背中に向けて三発の弾丸を放つ──
「はあ…しつこいヤツだ──」
動かなくなったモーリスの背中を確かめて執事はチッと強く舌を打った。
早くしなければ自分も巻き込まれてしまう──
執事は急いで執務室に足を向けた。
走り去った執事の足音が床を響かせて伏せたモーリスの頭に伝わる。
「虫の息か──」
……──!
執事が立ち去った居間で、頭上からそんな静かな声が聞こえた気がした。
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