12章 主従の契約(後編)

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・ 響いた銃声と共に執事の足に絡み付いていたモーリスの腕が弾けるようにそこから放れた。 「くうっ…娘を…娘だけはっ…お前にも娘がいるだろうっ──!」 「……っ!?…う、うるさい、早く死ねっ…死ねっ…死ね──っ!」 苦し気に悶えながらモーリスは後ずさる執事の足を掴もうと床を這い寄る。 執念の目を向けたモーリスに執事は一瞬背筋を震わせていた。 怯えた執事の銃口がモーリスの額を掠め、背中に向けて三発の弾丸を放つ── 「はあ…しつこいヤツだ──」 動かなくなったモーリスの背中を確かめて執事はチッと強く舌を打った。 早くしなければ自分も巻き込まれてしまう── 執事は急いで執務室に足を向けた。 走り去った執事の足音が床を響かせて伏せたモーリスの頭に伝わる。 「虫の息か──」 ……──! 執事が立ち去った居間で、頭上からそんな静かな声が聞こえた気がした。
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