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「もっと火を放て!公爵はここを更地にして新しく家を建てるそうだ!お前達にも褒美があるぞっ」
ヘラルド公爵の使者が高らかに指示をだす。
それを聞いた賊の群れは火種の木々を笑いながら民家に投げ込んでいた。
「ゴホッ…くそっ!権利書と一緒にあると思ったのに何故ない!?」
「早くして、煙りに巻かれてしまうじゃないさっ」
「わかってるが葡萄作りの改良書も手に入れろと公爵がっ!」
リモーネはモタモタと執務室の引き出しを探る執事を急かした。
「あった!開きの奥に隠し金庫が──」
「よかった」
「よくない!ビクともしないっ!?鍵がなきゃ持ち出せないっ!──くそっやられたっ…」
執務室の重い卓の開き戸の奥にあった隠し金庫を見つけ、その強固さに執事は怒りをぶつけた。
「鍵…まさか」
リモーネは呟く。
「こころ当たりがあるのか?」
「ええ、たぶんっペンダントだわっ」
「ペンダント!?」
「イザベラが身に付けてるペンダントの中よっ」
「……あり得るな…」
二人は執務室を飛び出すと急いで煙の廊下を走った。
「くそっ前が見えないっ」
「こっちよ!」
イザベラの部屋に行き慣れたリモーネの足が執事よりも早く煙の中を進み部屋へとたどり着かせる。
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