12章 主従の契約(後編)

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・ 「ああっすごっ…」 リモーネは熱を帯びた瞳で首筋から口を離した男の赤い目を見つめていた。 「公爵様の媚薬より熱いっ……」 自ら肩にしがみつき求めてきたリモーネの反対の首筋にまた牙を刺す── 一度で隈無く血を吸いとる為に男は禁忌の吸血を施していた。 数ヵ所の吸血は明らかに獲物の命を奪う行為。 男はそれをリモーネに繰り返す。 両方の首についた咬み痕からは血液が流れ続ける。 男は止血もせずに胸元へと唇を這わせワンピースを強引に手で引き裂いた。 弾けた白い膨らみが目の前で揺れる。秘部に送られた疼きで隆起してしまった乳首を無視したまま、男の鋭い牙は心臓の真上に突き立てられていた── 「ギャーっ…」 イザベラが眠るベットの端に倒れながら激しい悲鳴が邸全体に響く── だが、イザベラは一向に目を覚まさない。眠りの呪縛はすでに掛けられていた… 強い痛みと下半身から押し寄せる疼きでリモーネは狂ったように首をふる。 「あああっダメッダメッ─おかしくなっ…っああっ…」 躰中が痙攣しはじめていた。 血を吸われ続け、ピクピクと震えが止まらない… 次第に底を尽き始めた証拠に張りのあったリモーネの肌に皺が寄っていく── 膨らんでいた胸が老婆のように弛み、皮膚はカサカサと水分が抜けていく── 「ふっ…この姿で男の元へ返してやるか…」 死よりももっとも残酷に── お前には絶望を与えてやろう──
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