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「お前が手を掛けた男は娘の命を擁護する代償に沢山の条件を上乗せした──」
喉を鷲掴まれたまま身体が床から浮き上がる。
「……っ…」
「この契約書に署名した後にあれは死ぬ。せめてもの贐(はなむけ)──…あの世への餞別代わりと言ってはなんだが、お前にも同じ痛みを与えてやる…」
「──…っ…」
平然とした表情で軽々と大の男一人の体を片手で持ち上げる力に執事は目を血走らせながら呻き声を上げていた。
「ひっ……ぐっ…グハっ…」
「たしか肺に三発だったな…」
「グアアっ…──」
執事の肺の上に突き立てられた男の指がゆっくりと付け根までめり込んでいく──
指をそこから引き抜く度に片手で持ち上げた執事の身体が大きく揺れ動く。
白眼を剥き掛けて気絶しそうになると男は無情にも執事のその身体を揺さぶった。
「だらしがない──…あの男は貴様に毒を盛られ、三発の銃弾を受けてもなお……俺に娘の擁護を乞うたぞ──」
「ウウアァっ…た、助けっ…グアっ…」
「ふっ──…乞うのは己の命の擁護のみか?あの男とは格が違いすぎるな…」
「や……っ…やめっ…」
魔物である男の五本の爪が心臓の上に宛がわれ、執事は眼を剥いて悲鳴を上げた。
「乞う価値もない命だ──」
「ウギャアァァア───」
絶叫がけたたましく響いた…
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