94人が本棚に入れています
本棚に追加
・
「逃げてこないってことはモーリス様もイザベラもっ…──っ」
「泣くなっ…」
「ああっ…俺達はやらなきゃならんことが山ほどあるっ…」
村を見つめながら涙に暮れ皆で励まし合う──
雨に濡れていく村を見守る民達の目に異様な光景が広がっていた──
「なんだあれは──」
「ひっ…化け物っ」
「魔物かっ」
雨の空を無数に旋回する翼を持った黒い影。
それを目にしながら口に手を充て息を飲んでいた。
「ガーゴイルかっ!?」
「ガーゴイルっ!?──…ってことは近くにヴァンパイアの首領が居るってこったっ!」
「血の匂いに寄って着たんだろう…逃げてきて正解だったな──」
「ああ、ほんとだっ」
額に滲む汗を拭ってその光景に震えていた──
「グレイ様の御許しが出た──…穢れた肉のみを喰い漁れとのお達しだっ!」
一匹の魔物がそう言葉を放った途端、ガーゴイルの群れが嬌声を上げて村へ降りていった。
火の消えた村で新たな悲鳴が聞こえる。空を飛び交う魔物の使者、ガーゴイルが火種の棒きれを手にした賊達を次々に喰らっていく──
最初のコメントを投稿しよう!