12章 主従の契約(後編)

25/36
前へ
/36ページ
次へ
・ 「逃げてこないってことはモーリス様もイザベラもっ…──っ」 「泣くなっ…」 「ああっ…俺達はやらなきゃならんことが山ほどあるっ…」 村を見つめながら涙に暮れ皆で励まし合う── 雨に濡れていく村を見守る民達の目に異様な光景が広がっていた── 「なんだあれは──」 「ひっ…化け物っ」 「魔物かっ」 雨の空を無数に旋回する翼を持った黒い影。 それを目にしながら口に手を充て息を飲んでいた。 「ガーゴイルかっ!?」 「ガーゴイルっ!?──…ってことは近くにヴァンパイアの首領が居るってこったっ!」 「血の匂いに寄って着たんだろう…逃げてきて正解だったな──」 「ああ、ほんとだっ」 額に滲む汗を拭ってその光景に震えていた── 「グレイ様の御許しが出た──…穢れた肉のみを喰い漁れとのお達しだっ!」 一匹の魔物がそう言葉を放った途端、ガーゴイルの群れが嬌声を上げて村へ降りていった。 火の消えた村で新たな悲鳴が聞こえる。空を飛び交う魔物の使者、ガーゴイルが火種の棒きれを手にした賊達を次々に喰らっていく──
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加