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一軒の民家の戸口を蹴り壊すとガーゴイルは鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。
「ヒッ…くっ、来るなっこれは渡さんぞっ…これだけはっ」
民家の裏口の藁の納屋に回り、見つけた人間の臭いを嗅ぎまくる。
男はハンチング帽子を振り回しながらガーゴイルを必死で追い払おうとしていた。
木箱のケースを大事そうに抱え、その中でワインのボトルがカタカタと揺れている──
ラベルに貼られた年代が六年前と、作られた年代がまだ若い──
「こ、これはイザベラお嬢様の二十歳の祝いに旦那様と一緒に開ける約束したんだっ…お前達のような鳥に飲まれてたまるかっ──」
ガーゴイルは後退りながら必死で帽子を振り払う男の側まできてその全身の臭いを嗅ぎまくった──
「フンッ──」
「……っ!」
顔の真ん前で鼻を強く鳴らされ怖さに息が止まりかける。
ヒッ──と声を上げながら眼を瞑っているとガーゴイルはゆっくりと背を向けた。
「………な、なんだっ?」
なぜ助かったかがわからなかった──
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